〜音の風景⑫〜[山里-2] DC40-12
裏磐梯の春 (ニゴイの産卵)
毎春恒例の裏磐梯の録音であるが、今回は既に鳥の時期を逸していた。
これまで録れていないヘラブナの産卵の水音を求めて桧原湖周辺を巡ったが、これも時遅し。桧原湖に注ぐ川の橋に立って恨めしく眺めていた。
その時、どこからともなくバシャバシャと微かに魚が跳ねているような音が聞こえた。後ろの川の方角だ。上流方向を眺めていると、40メートルほど上流で魚が跳ねている。
背丈ほどのクマザサをかき分けて行く方法しかない。録音機を持って川の縁に出てみると、逃げもせずに目の前に沢山の魚はメスの腹をつついていた。左右に100匹ほど泳いでいる。「これはチャンス」と録音を始めた。「やったやった!」と心で叫びながら録音を済ませた。
その晩は友人との晩餐会。早速録音を聴いてみると「凄い。陸海空だ!」と。つまり海は水音、陸にはカジカガエルと雨音、空には鳥、ということで、大笑いした。
持って行った3台の録音機のうち、2台を故障させてしまったが、残りの1台に素晴らしい録音が入っていた。
後で判った事だが、「あれはヘラブナじゃなくてニゴイという魚だ」と写真と共に連絡が来た。体調30〜40センチもあるが、食べても美味しくない魚だそうだ。
一回の録音旅行で使える録音が一つあれば上出来だ。